ハンガリー 中世の街(ショプロン) 1997年 油彩 162.0×130.3cm(F100) 日本赤十字社静岡支部 蔵
歴史を語る都市(文=美術評論家・佃 堅輔)
赤い屋根の連なる本作を見ると、ハンガリーの北西端のこの美しい中世の街が、かつて東西冷戦時代、旧東ドイツ国民を隣国オーストリアへ大量越境させた歴史的な街だったとは思えないほどである。今やベルリンの壁は崩れ、東西冷戦も終結した。画家は、今この平和な中世の街にたたずみながら、どのような思いにかられたのだろうか。人け無い街の静寂を見る。
ショプロンとは?
ショプロンは、オーストリアとの国境に位置し、冷戦終結の一つのきっかけとなった「ヨーロッパ・ピクニック計画」が起きた街。ローマ時代の遺跡の上に建てられた「火の見の塔」からは、古いシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)など歴史的建造物が残る旧市街を一望できる。