世界遺産「ヴァッハウ渓谷」ドナウ川からヴァイセンキルヒェン大聖堂を望む 水彩 38.0×52.0cm
音楽の都、ドナウ川流域の景色(文=美術評論家・佃 堅輔)
ドナウ川流域には美しい景色が多いが、画家は、ヴァッハウ渓谷を描く。南北の山脈に抱かれた36kmに及ぶ渓谷で、両岸には古城や修道院が点在する。本作に描いたヴァイセンキルヒェン大聖堂は、12世紀ごろから存在したとされる。防衛教会として城塞化されるなど歴史の変遷を経てきた。聖堂参事会修道院教会はデュルンシュタインの象徴。クルーズ船上からのスケッチは、ドナウ川を渡る風の爽やかさを見る者に伝える。
ヴァッハウ渓谷とは?
ヴァッハウ渓谷はドナウ川の要衝。2千年以上前からワインの名産地として栄え、キリスト教布教や十字軍遠征の道として発展した歴史を持つ。人気のドナウ川クルーズでは、ブドウ畑が広がるヴァイセンキルヒェンや、青と白の外壁が美しい聖堂参事会修道院教会があるデュルンシュタインをはじめ、10万冊以上の蔵書を誇る図書館などがあり、当時の修道会の権力の大きさを感じることができるメルク修道院などを巡る。