帆船アモレナ号よりコルチュラ島を望む(クロアチア、アドリア海) 2013年 50.0×72.7cm(M20)
ドブロブニクを見ることなくして天国を語ることなかれ(文=美術評論家・佃 堅輔)
アドリア海の島々を巡るクルーズの旅に用いられる帆船「アモレナ号」。画家の視線はその甲板からコルチュラ島に向かっている。明るいブルーひと色の実に穏やかな海面と白い帆柱や赤い帆が、この絵の構成的ポイントを成し、近づいてゆく島に対するパースペクティブを形作る。島の教会の塔を取り巻く赤い屋根の家々と赤い帆とが色彩的に響き合う。
ドブロブニクとは?
クロアチア南部の港町・ドブロブニク。紺碧のアドリア海を背景に、白壁と赤い屋根が連なる街並みが美しく「アドリア海の真珠」とたたえられている。城壁に囲まれた世界遺産「ドゥブロヴニク旧市街」は、一時は内戦で甚大な被害を受け危機遺産として登録されていたが、市民の手で再建された。旧総督邸は有名建築家のオノフリオ・デラ・カヴァによって建てられた。長い歴史の中で損壊と修復を繰り返してきたため、ゴシック、ルネサンス、バロックなど、さまざまな建築様式が混在。グルージュ港はドブロブニクの主要な海の玄関口で、ヨットやクルーズ船などが集まる。オノフリオの大噴水は旧市街に飲用水を供給する水飲み場として建設された。16個の蛇口には顔のレリーフが施されている。ロマネスク様式の回廊を持つフランシスコ会修道院。併設するクロアチア最古の薬局「マラ・ブラーチャ薬局」は、世界で3番目に古い薬局として有名。