ドブロブニク旧総督邸の窓より 2014年 油彩 162.0×130.3cm(F100)
ドブロブニクを見ることなくして天国を語ることなかれ(文=美術評論家・佃 堅輔)
この建物は総督の住まいのみならず、小評議会、元老院、裁判所、公証人役場、牢獄、武器鋳造所といった政府の機関が置かれ、共和国行政の中心拠点だった。建物の内部はゴシック、ルネサンス、バロックなどの建築様式が混在する。ステンドグラス付きの窓枠を通して描かれた外部の風景と、コントラストを見せるこの薄暗い室内空間は、歴史の重みを積み重ねながら威厳を保持している。
ドブロブニクとは?
クロアチア南部の港町・ドブロブニク。紺碧のアドリア海を背景に、白壁と赤い屋根が連なる街並みが美しく「アドリア海の真珠」とたたえられている。城壁に囲まれた世界遺産「ドゥブロヴニク旧市街」は、一時は内戦で甚大な被害を受け危機遺産として登録されていたが、市民の手で再建された。旧総督邸は有名建築家のオノフリオ・デラ・カヴァによって建てられた。長い歴史の中で損壊と修復を繰り返してきたため、ゴシック、ルネサンス、バロックなど、さまざまな建築様式が混在。グルージュ港はドブロブニクの主要な海の玄関口で、ヨットやクルーズ船などが集まる。オノフリオの大噴水は旧市街に飲用水を供給する水飲み場として建設された。16個の蛇口には顔のレリーフが施されている。ロマネスク様式の回廊を持つフランシスコ会修道院。併設するクロアチア最古の薬局「マラ・ブラーチャ薬局」は、世界で3番目に古い薬局として有名。