チェスキー・クルムロフ城より世界遺産「チェスキー・クルムロフ歴史地区」を望む 2010年
130.3×162.0cm(F100) 個人蔵
歴史的時間を超越した街並みを俯瞰的視座で描く(文=美術評論家・佃 堅輔)
本作では南ボヘミア州の小さな都市が描かれる。「クルムロフ」とは「川の湾曲部の湿地帯」を意味する。画 家はすぐれた建造物、クルムロフ城に立ち、アーチ形の建築構造の枠から、さながらこの風景を切りとるように、家並みやゴシック風の教会の尖塔や、緑豊かな丘陵地帯や山並みを眺める。美しいボヘミアの風景に、ボヘミアの民謡をうたったチェコの詩人ライナー・マリア・ リルケの、こんな詩が、わたしにはふと思い起こされる。「愛とふるさとの美しさは/彼の手に提琴の弓を握らせ/そのひびきひそかにし たたり…」(「民謡」)。
チェスキー・クルムロフとは?
チェスキー・クルムロフ城は、城主が目まぐるしく変わったこともあり、創建当初のゴシック様式から、ルネサンス様式、バロック様式と増改築が重ねられ、プラハ城に次ぐ規模の城郭となった。