1. 垣内宣子《セザンヌのアトリエ(エクス・アン・プロヴァンス)》

    ごあいさつ

  2. 垣内宣子《バルト海クルーズ》

    略歴

  3. 社会貢献活動

  4. 出版物

オルタ湖とサン・ジュリオ島 2007年 油彩 130.3×162.0cm 神奈川県荏田高等学校蔵

 

風景美への旅―視線により広がる世界(文=美術評論家・佃 堅輔)

本作は、オルタ湖(イタリア)の東岸に位置するオルタ・サン・ジュリオの町から湖上に浮かぶサン・ジュリオ島を描写。町の近くにはキリスト教の宗教施設サクロ・モンテがあり、礼拝・巡礼の地としても知られるこの地で、哲学者のニーチェは、著述家のルー・アンドレアス・ザロメに恋をするが失恋に終わる。失恋の苦悶がなければ、ニーチェの「永劫回帰」の思想は生まれなかったのではないか、と思いを巡らせるのもよいだろう。この作品で画家は赤い屋根を色面的に捉えるのではなく、屋根の瓦を一つ一つ細部にわたって描写しており、今まで見てきた作品とは少し趣を異にする。画家の風景美を求める旅は実に豊かさに満ちており、その旅はまだ続くだろう。私たちはその旅から生まれる作品群によって、さまざまな風景に出会う旅へといざなわれる。画家も私たちも共にエトランゼとして、風景と一体になる融合的感応の世界を分かち合うのだ。それが垣内宣子の芸術的世界である。

オルタ湖とは?

オルタ湖は、アルプスの山々に囲まれてたたずむ姿から「緑に包まれた小さな宝石」と呼ばれている。湖畔の町オルタ・サン・ジュリオの丘の上には、世界遺産に登録されている「サクロ・モンテ」の礼拝堂群があり、湖を一望する絶景スポットとして人気。町と島は礼拝・巡礼の地としても知られている。