ディアマンティ宮殿の中庭(フェッラーラ) 油彩 91.0×72.7cm 川崎市国際交流センター蔵
まなざしを魅了する光景(文=美術評論家・佃 堅輔)
本作で描かれるディアマンティ宮殿は、15世紀後半に建造されたものだが、約1万個の大理石をダイアモンドに見立てたことから、この名が付けられたという。現在は、その一部が国立美術館。アーチ型の入り口と、その奥の影の深いセルリアンブルーとコントラストを成す大理石の幾何学的な整合模様を見ていると、洗練されたモダンな抽象美にいざなわれよう。もう一点は、大理石が陽光の陰りの中で、まさにブルーの色階をさまざまに競演してみせる。画家のまなざしも、刻々と変わりゆく陽光のもと、大理石のデリケートな表情を一個たりとて見逃さまいとする描写の中で染まってゆく。
フェッラーラとは?
初期ルネサンス様式のテラコッタ装飾が施された宮殿や邸宅が数多く残るフェッラーラ。カテドラーレ美術館にはフェッラーラを代表するフェッラーラ派の画家「コズメ・トゥーラ」の傑作の「サン・ジョルジョと竜」などが展示されている。西洋美術史において重要な役割を果たした文化的資産を有する都市として、フェッラーラは1995年に世界遺産に登録された。