プローチダ島(ナポリ) 2018年 油彩 130.3×162.0cm 川崎市立下小田中小学校蔵
絵画による「イル・ポスティーノ」変奏曲(文=美術評論家・佃 堅輔)
本作は、2017年にナポリ湾西方にあるプローチダ島を訪れたときの作品で、港から小船で30分ほど沖に出たところから描かれた。島の岸辺に並ぶ建造物の窓が、さまざまな形や表情を見せて面白い。画家は、この風景の持つ幾何学的フォルムの構成美に関心を抱いたという。また、プローチダ島といえば、イタリア映画『イル・ポスティーノ(郵便配達人)』が思い出されよう。プローチダ島を舞台に、祖国チリを追われた詩人パブロ・ネルーダと貧しい青年郵便配達人との心温まる交流を描いた作品だ。正面を向いた家々の窓の表情は、あの純朴な青年が詩人の言葉に目覚め、心を開いてゆく様子を思い起こさせる。画家も、一つ一つの家を丹念に描きながら、造形的リズムに快い響きを与える。
プロ―チダ島とは?
プローチダ島は人口約1万人、外周約16kmのナポリ湾で一番小さな島。マリーナ・グランデの反対側には、映画の撮影でも使われたコッリチェッラ海岸。パステルカラーの街並みが美しく、テッラ・ムラータの見晴台から全景が見下ろせる。