チンチョン村の闘牛場(マドリード) 1983年 130.3×162.0cm(F100) 東京慈恵会医科大学蔵
白く輝く村。広場の祭りの楽しさ(文=美術評論家・佃 堅輔)
チンチョンは、首都マドリードから南東約50kmにある小さな村。かつては、ペルーの副王・チンチョン伯爵の村だった。今は闘牛場も兼ねる広場を中心に家々が軒を連ねている。広場はその柱廊と緑色に塗られた234の木製バルコニーで囲まれており、これはカスティーリャ地方独特の民間建築の一例である。広場では、2月に大規模な中世市場が開かれ、トーナメントや手工芸などさまざまなショーが開催される。8月には広場が闘牛場になり、闘牛や牛追い、スポーツ、公演、宗教行事などが行われる。本作から闘牛に熱狂した人々の声が聞えてくるようだ。
チンチョンとは?
チンチョンは1974年に国から歴史的資産として認定され、2017年に「スペインの最も美しい村」に選定された村。マヨール広場を囲う15~17世紀に建てられた建物には、レストランやバルなどお店のほか、市役所や観光案内所などが並んでいる。広場は建設当初から国王の即位式や王室の行事、馬上槍試合、演劇、処刑の舞台、映画の撮影などに使われてきた。夏になると闘牛場となり村全体が盛り上がる。アルコールが強くドライな風味のアニス酒とニンニクが名産。