白い村 カサレス(スペイン) 2003年 油彩 162.0×130.3cm(F100)
白く輝く村。広場の祭りの楽しさ(文=美術評論家・佃 堅輔)
イスラム教徒たちが住んでいたスペイン南部の地域は、15世紀キリスト教国によって征服され、カディスの侯爵に引き渡される。表面的にキリスト教に改宗したイスラム教徒たちは、山奥の小さな村に隠れたが、アンダルシア地方のカサレスはそうした村の一つだった。本作には、強烈な太陽の日差しの下で暮らすアンダルシア人の生活の知恵が生んだ白壁の家々が連なる。それら白い家は、熱がこもらないように蜂の巣状に穴が開いたレンガで造られ、その上を白い漆喰で塗り固めている。また、窓を小さくし、家を密集させることで建物に入る熱を抑制。さらに日影を利用するために路地を細くしている。画家の描く青空と、日差しを反射する教会や遠方の家々の白壁の輝きが、リズミカルに共鳴する。右手の家の赤い花と、路上に落ちる影とのコントラスト。白に魅了される画家のまなざしも輝く。
カサレスとは?
スペイン・アンダルシアの白い村・カサレス。岩山の斜面に沿って真っ白な壁にオレンジ色のスペイン瓦を配した建物が立ち並ぶ。「カサレス」という名は、この地の「ラ・エディオンダ」という硫黄泉で肝臓病を治した古代ローマの英雄「ジュリアス・シーザー」の名をラテン語読みした「Caesar(カエサル)」に由来。村の中心にあるスペイン広場には、18世紀にカルロス3世の支配下で整備された「カルロス3世の泉」が残され、今もまだ水が湧き出ている。